2021年11月6日土曜日

見えない敵との戦い

2021年7月11日 化学放射線療法

 二回目の入院では、放射線治療(放射線照射 週5回(月〜金曜)計35回)と、化学療法(抗がん剤点滴 週1回(火曜)計7回)を並行して実施する、化学放射線療法を行います。
 手術で切除しきれなかった細胞や、目に見えない小さな細胞を死滅させるため、がん組織周辺(切除した喉頭周辺)への放射線照射と、広い範囲の再発・転移を防ぐ化学療法を組み合わせることで、高い治療効果を目指します。ですが高い効果が期待される反面、副作用も強いとされるあたりに、抗がん剤治療の厳しさが潜んでいます。

 放射線治療では、身体に照射位置を合わせるマークが描かれ、照射時には頭部を固定する、ミイラの棺(ひつぎ)のような固定具(金網メッシュのマスク)が被されます(15分程度)。密着するようオーダーメイドで作られたマスクを、装着時にパチッと締め付けられると、息が詰まりそうな恐怖感を覚えます。手にした緊急ボタンを押しても、外すまで時間かかりそうなので、パニックになる人もいるのではないか? 咳ができないのもプレッシャーですし、マスク装着時は「生きた心地がしない…」というのも、大げさな話ではないと……
 化学療法の肝となる抗がん剤(シスプラチン)点滴は約2時間で済みますが、そのためには様々なケアが必要で、週の中で連続した3日間(火曜:9時間、水曜:4時間、木曜:4時間)のセットを行います。火曜は、吐き気を和らげる薬、点滴ルートの洗浄、水分・電解質補充、吐き気を和らげる薬、利尿剤、抗がん剤、水分・電解質補充の7種類、計9時間。水・木曜は、それぞれ水分・電解質補充が4時間。また月曜に、血液検査(腎機能チェック)で抗がん剤投与の可否を調べます。

 治療開始当初は何の違和感も感じませんが、3週目あたりから体のダルさと変調を感じはじめます。木・金曜に出現するダルさは土・日曜に落ち着き、週ごとに切り替えられましたが、次第に蓄積しはじめ、ダメージが継続するようになります。ここで出現した変調には、味覚から「甘さ」が失われる、「抜け毛」が増える、痛み止めの効果が弱まる 等があります。味覚異常は甘さだけで、コーヒーのコクや、乳製品・出汁の味は変化ありません。抜け毛も一時的で、よく耳にする事態には至らずに済みますが(抗がん剤の種類が違うためか?)、痛み止めの効き目が薄れたと感じたのは、痛みのレベルが上がったためのようです。
 首の締めつけ感を軽減する効果が失われたため、より強い痛み止めである、医療用麻薬(モルヒネ)を使用することになります。その響きから、がん闘病で入院中にモルヒネを使用していた、大学同級生の記憶を想起することに(彼はその後亡くなった)。できれば触れたくない記憶ではあっても、はなから無理だったわけで、当然、重ね合せて考えることになります(彼の方がはるかに厳しい状況に思える)。
 医療用とは言え、できるだけ麻薬の世話にはなりたくないと考えますが、ダメージの蓄積で効果が薄れても、効き目の強さを調整できることを実感してからは、正しい付き合い方を目指すことに。ですが副作用とされる便秘では、手術後は息を止めて力めなくなったため、これまでに経験したことのない「長時間の戦い」を強いられることになります。これが苦しいこと……

 7週間という長い道のりのため、気持ちの張りを維持することが難しく、また、終盤に新たな課題が出現するため、ストレス等の負荷は増大する一方で、逃げ場もなく、精神的に追い詰められることに……


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