2021年7月31日土曜日

セカンドオピニオン

2021年5月6日

 連休明けの面談(診察)には妹も同席してもらいますが、異なる所見を引き出せそうな質問項目を持たないため、先生の説明内容は変わりません。今後の治療について、こちらから口を挟めるとすれば、別病院でのセカンドオピニオンを紹介してもらう、程度しかありません。現実から目をそらすような態度に見えたとしても、「ワラをも掴む」思いであがいていました。

セカンドオピニオン
よりよい決断をするために、当事者以外の専門的な知識を持った第三者に求める「意見」、または「意見を求める行為」のこと。

 セカンドオピニオンで紹介してもらう施設候補として、築地の国立がん研究センター(1962年)、有明の公益財団法人がん研究会(1908年)を検討します。国の研究機関として、統一的見解を示す立場にあるのは国立がん研究センターですが、ホームページの説明はがん研究会の方がわかりやすい印象があります。われわれとしては、専門知識を持たない者でも理解できる説明を評価するしかありません。
 セカンドオピニオンの紹介依頼に対し、東大病院の先生は嫌な顔を見せることなく、淡々と紹介状の準備をしてくれます。このやり取りについては、実際の経験談の感触として、いたって平穏に話が運んだこと、何の不安・心配もいらなかったことを、お伝えしておきます。

 国の方針である、がんの標準治療化による施設間・地域間格差の是正に向けては、セカンドオピニオンによる問題点の洗い出し(医師の腕に頼らない治療)や、共通化しにくい要望(オーダーメイドケア)の受け皿のような、課題を共有する場が有効な手立てとなるかもしれません。専門医の指針を、患者が判断できるレベルに落とし込むことは、医師の目指すところでしょうし、「患者との納得の共有」は、大きな目標ではないかと。

がんの標準治療
科学的な根拠に基づき、現在利用できる最良の治療であることが証明されている治療のことで、「3大治療」と呼ばれる手術、化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療を指します。「最先端の治療」は、臨床試験などを経て、それまでの標準治療よりも優れていることがわかった時点で、専門医らによって「標準治療」と位置づけられることになります。

 恩に背を向けるようで、心情的に遠慮しがちな制度ではありますが、自分のように逃げ場を求める患者にとっては、「ワラになってくれる?」制度かもしれません……

 右:東大病院施設(2013年)。

2021年7月24日土曜日

本人に都合の悪い話

2021年4月27日

 東大病院での検査結果の説明は、家族の同席を求められることもないまま(難しいとの判断らしい)、「本人に都合の悪い話ではありますが……」と、サラッと始まります。
 下咽頭がん:ステージIV(5年全生存率:50%)、中咽頭がん:ステージIII、リンパ節転移、食道がんが見られるため、喉頭(こうとう:のどぼとけ)を含む切除手術、および薬物療法(抗がん剤)+放射線治療が必要(手術1ヵ月、治療2ヵ月の入院)、との説明を受けます。

下咽頭がん
進行した下咽頭がんの場合喉頭に近接しているため、喉頭も含めて切除せざるを得ない場合もあります。その場合発声機能を失ってしまうこととなります。遊離皮弁として小腸の一部を採取して移植、呼吸のための気管の穴を首に作ります。
主な原因には、喫煙・飲酒との関連が挙げられますが、現在、指針として定められている検診はありません。

 都合の悪い話を並べられるとついていけませんし、冷静さを保つことが困難な状況に追い込まれていきます。話の中に潜むネガティブな表現を、「それはまだ先の話」と切り分けることは可能でも、さしあたって大きな障害となる「声を失うこと」を受け止めるだけで、思考回路は「緊急停止事態:フリーズ」に陥ります。「つんく♂ 氏のようになる」と考えたことはなかったが、その不便さは容易に想像できるため、いちいちフリーズしてしまいます。

 以前のがん宣告のイメージは、進行度(ステージ)と生存率(余命)がセットで伝えられると、照明が暗転するショッキングな場面として描かれるものでした。近頃では5年全生存率を含め様々な情報がネット等で公開され、病気に対する社会の経験値が高まった(罹患者が増えた)ため、冷静に受け止められるようです。とはいえ、逆転は不可能でも負担を軽減する方策はないか? 可能性を探ろうとして、「ポカァ〜ン」と空を眺めてばかりいました……

 右:龍岡門(2013年)。


7月23日
この辺でもオリンピック始まるんだって

 有明周辺には複数の競技施設(有明テニスの森、有明アーバンスポーツパーク、有明体操競技場、有明アリーナ 等)や、メインプレスセンター(東京ビッグサイト)があることから、近頃大型バスの通行が増え、外国人が目立つようになってきた(関係者が外を出歩いていいの?)様子から、開催が近いことに気付いた方が発した言葉になります。

 濃厚接触者と判定された競技者が出場する競技会を「安心安全な大会」と言えるのだろうか?
 フェアプレーの定義で重視される「公正性」では、出場選手の健康状態は「公平な感染の可能性ではなく」「公平な健康状態」が要件とされるべきです。
 そのような「安心」「安全」「健康」が担保されなくても開催される競技会の目的とは? 終幕まで考えてみても、答えは見いだせないだろうと……

 国民の気持ちがバラバラの五輪で、いくら最多のメダルを獲得したとしても、何の励みにもならないのではないか? 五輪終了後の感染状況を直視する際に、多くのメダルを手にしていても、勇気が出るとは思えません……

2021年7月17日土曜日

東大病院はかかりつけ医?

2021年4月19日

 歴史と信頼の賜物でしょうか、東大病院を「近所のかかりつけ医」的に利用するお年寄りが多い印象を受けます(ものすごい混雑にも慣れている様子)。病院が目指すべきひとつの姿とも言えますが、日本の最高学府の頂点に属する病院としての威厳を、もう少し感じたい気もします。
 大学病院に欠かせない、研修システムは確立されているようで、最初の問診は経験の浅い方、次の検体採取には中堅どころの若手指導者と、見学するだけの新人がペアで対応します。完全に教材扱いでも、自然と「お役に立てれば」の姿勢になれるのは、大学病院への期待感なのでしょう。診療科のリーダー的な先生が、若い人たちに慕われる様子は、大学病院システムに不可欠な情景と感じますが、その上部にそびえるピラミッドは別世界なのかもしれません……

4月19日 初診、検体採取、MRI検査(別の医療機関で受けたが、すごい音がする)
4月20日 胃の内視鏡検査
4月21日 CT検査

 検査結果が判明するまでの最後の猶予期間も、自己防衛本能で守られているため、久しぶりの東大散策気分で検査に通います。
 現在東大のキャンパスは、コロナ対策のため関係者以外の立ち入りが禁止されています(門でチェックしている)。
右:赤門(2009年)。

2021年7月15日木曜日

無意識の自己防衛本能

2021年4月14日

 朝目覚めると、喉の調子がよくありません。声が出ないため鏡をのぞくと、喉がポッコリ腫れており、これはまずいと近所の耳鼻咽喉科を探します。これが最初の自覚症状でした(痛みはない)。
 内視鏡で喉の撮影を試みるも、シャッターの押し方がわからないようで、結構手間取ります(町医者ってこんな感じなの?)。腫れた患部について、「がんのおそれもあるので、うちでは判断できない」と、東大病院の紹介状を渡され短時間で終了します。
 耳鼻咽喉科の先生は「がんのおそれ」と表現しますが、自分の中ではこの時点ですでに、ネガティブな要素を無意識に排除する自己防衛本能が働き、情報統制・表現の選択が確立されていたのではないかと。
 「病気だったらどうしよう?」と考えなかったことに、当時の自分も「ずいぶんのんびりしている」と感じたが、この分析の方が正しそうに思えます……

 右:4月10日 いなげの浜
 

7月14日
アメリカンドリームの売り方

 MLBオールスターゲームでは、ニューヒーロー大谷翔平選手を前面に押し出し、「二刀流」をアピールするとともに、リーグの人気拡大を狙う姿勢に抜かりがありません(彼らは、win-winにならない企画は考えません)。その晴れ舞台で輝きを放った大谷選手こそ、未来のスター選手候補との盛り上げ方はさすがだし、そこに乗っかった大谷選手も、やはりただ者ではないと……

2021年7月11日日曜日

春待ち気分の頃

introduction

 がんは、予防可能な生活習慣や環境要因が原因の「生活習慣病」とされますが、年齢とともにリスクが高まるため、定期検診等の検査項目は増えていきます。日本人の死亡原因の第1位、2人に1人ががんになるとの統計を受け、「がん検診は受ける必要がある」の認識を持っていました。ですが、「いまはまだ…」「それはいつ?」の答えを持たない段階で、病気を告げられ追い詰められた者が、思い巡らせた事柄をまとめようとするものです。


2021年3月

 扁桃腺が腫れ気味? 右側の喉に小さな腫れを自覚したので(痛みはない)、対処として市販薬を飲んでみます。すぐに引いてきたと安心できる程度なので、特に意識をしていませんでした──振り返れば、まるっきりの勘違い。
 タバコを吸う者にとって、タンの増減は日常的なことなので、少し増えた? 程度で受け流してしまいます。昨春は鼻水が止まらず「花粉症かも?」の印象があったため、そちらの心配をしていましたが、この春は大丈夫そうな様子なので、気持ちも明るかった気がします。
 この時分はまだ病気を意識することなく、今年の桜は早すぎでしょ! と、春待ち気分に浸っていました。
 右:3月27日 旧中川。