2021年9月24日金曜日

まな板の鯉

2021年5月27日 コロナウイルス抗原検査

 入院1週間前に一般的な検査(HIV検査を含む血液検査、尿検査、身長・体重測定、心肺機能測定+心電図検査、歯科検診(口内衛生)等)は済ませましたが、入院前日にはいまどき必須のコロナウイルス検査を行います。ここで行われた抗原検査(インフルエンザ検査に多く用いられる、ウイルス特有のタンパク質(抗原)を検出する検査)は、結果判明まで5時間程度のため、夕方に陰性の連絡を受け、大きく胸をなでおろします。
 感染が拡大して1年半の間で初めて得られた裏づけは、大きな安心材料になりますが、いずれの検査もその時点までの経過判定ですから、引き続き警戒は怠れません。
 そんな状況下なので、入院患者との面会は原則禁止(面会者は病棟への立ち入り禁止)、患者もベッドを離れたらマスク着用とされます。ですが医療従事者の方々は、通勤に公共交通機関を利用するので、「これで安心」という状況が確保されるわけではありません。


5月28日 有明病院入院

 「声が出なくなった……」と、異変を感じてから1カ月半。当病院への治療依頼から2週間で入院なので、流れに乗れたと言えそうです。これから手術で1カ月弱(仕切り直しでひとまず退院)、化学療法+放射線治療で2カ月程度の入院生活が始まります。普通なら「長い」と感じる期間ですが、すでに洗脳されたかのような諦めの気持ちで、「まな板の鯉」のような心境だった気がします。
 高校時分にも入院したことがありますが(ちくのう症手術)、よほど耳鼻咽喉科に縁があるのか(今回は頭頸科)、センターライン周辺がわたしの弱点なのかもしれないと……


2021年9月8日水曜日

病院間連携の実感

2021年5月13日

 初診時の検査では、病状の把握、治療方針の決定、スケジュール調整 等を速やかに進めるため、スピード重視の「仮押さえ」的な手続きが用いられます。順序を配慮の上、可能な限り短期間での検査を目指す、時間との戦いでもあるため、前日に有明病院で入院治療の依頼をしたのに、この日は東大病院で検査(PET検査)の続きだったりと、いささか不義理な状況が生じたりもします。
 そんな状況下でも準備の継続が可能なのは、セカンドオピニオンと同様に病院間連携のおかげと言えますし、ひとつの目的のために、複数医療機関の横断的な活用が可能で、その体制が維持されていることは、評価に値する医療水準であると。
 その実現のためには、診断に用いられる一連の検査(内視鏡、MRI検査、CT検査 等)に統一の基準が必要となり、どの病院でも診断利用のためには、同じクオリティ(精細さや走査線密度? 等)が求められることになります。東大病院の内視鏡結果や、八重洲の病院のMRI検査結果には、有明病院の診断でも利用可能なクオリティが担保されていることになります。
 医療提供体制に対しては、がんの標準治療(施設間、地域間格差の是正を目指す国の方針)に限らず、全国どこでも同レベルの治療が受けられることが望ましいと、かなりハードルの高い理想を、われわれ患者は当たり前のように求めています(実現できたら、本当にスゴイこと……)。

PET検査
がん細胞は正常な細胞と比べ3~8倍のブドウ糖を取り込む性質があります。その性質を活かし、PET検査ではブドウ糖によく似た構造のFDG(フルオロデオキシグルコース)という薬剤を注射した後、全身を撮影しFDGの集まりを画像化します。全身にがんを疑う臓器がないかを調べます。


5月18日
 翌週東大病院にて、PET検査結果(問題なし)と有明病院での治療について話をします。
 セカンドオピニオンの紹介状に、有明の先生による「有明での治療希望」の記述があったおかげで、何の問題もなくスムーズに東大病院での診察を終えることができました。加えて東大の先生から、「頑張ってください」の励ましをいただき、理想とされる病院間の連携が、有効に機能していることを実感します。
 東大病院の皆様、ありがとうございました。

 右:安田講堂(2009年)。

2021年9月1日水曜日

「自分らしさ」の選択

2021年5月12日

 セカンドオピニオンをお願いした有明病院でも、「もっとも回復が望める治療は手術」と、わかりやすく丁寧な説明で諭され、抵抗の試みは店じまいとします。
 病院や主治医の変更は、セカンドオピニオンの主旨でないと理解した上で、あえて「意思の反映」に利用したいと考えたのは、人生の重大な局面となる病気治療にもかかわらず、認識した時点ですでに追い詰められていたためです。
 ですが、そこで思い浮かんだ条件は、口にするのもはばかられるようなものばかりでした。
 ・日常生活をできるだけ想起しない環境であること。
 ・気持ちがあくせくしない環境であること。
 ・海が見えること、空が広いこと。
 「自分らしさ」の選択が、治療(本質)ではなく心地(環境)であることに異存はないので、わがままながらも許してもらいたいと、有明病院さんに治療をお願いしました。
 本郷(東大病院)、築地(国立がんセンター)より落ち着けそうです。

 有明地区は、東京港修築事業計画(1931年:昭和6年)により埋め立てられ、80年代後半まで工業地とされます。年間来場者数1300万人の東京国際展示場(東京ビッグサイト)建設は1996年。
 無個性で生活臭がしないなど、余計な気を使わない「東京らしさ」の人気に加え、五輪のおかげで施設整備も終わったばかりですから、現在もっとも注目を集める地区と言えそうです。

 右:工事中の東京ゲートブリッジ(2009年)。


 ようやく体調が落ち着いてきたので、更新を再開しまいた。ということは、退院も近いことになりますが、その間のことについては、追々書き加えていきます。